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◇住まいのエッセイ◇

「私が選ぶ2001建築家カタログ」関西101人の仕事と家づくり情報に「環境に配慮した健康な住まい」を執筆しました。
その原稿を一部抜粋、加筆して、掲載いたします。
「環境に配慮した健康な住まい」  
[一年間のホコリをすっかり取り除く]  
たしか東京オリンピックの年くらいからでしょうか。それまで恒例になっていた大掃除という年中行事が全く無くなってしまいました。
その頃は、私が住んでいた大阪市の中心部は、今のようにオフィスビルが立ち並んでいるのではなく、木造2階建ての商店併用住宅が主流でした。
どこの家でも、大掃除のその日は、朝早くから家族と店の従業員が全員でいっせいに大掃除に取りかかったものです。
畳はすべて取りはずして道路に立てかけ一枚ずつたたいてホコリを出したあと、日干しをします。畳の下に敷いてあった新聞紙も取りのぞき、きれいにした後、敷き替えます。ついでに床板もはずして、縁の下の掃除をします。
また当時は、どこの家もほとんど木製のガラス窓でしたが、その建具をはずして水洗いをし、これも日に干し、最後はすべて戻し、大掃除は出来上がり。
こうして一年間にたまったホコリをすっかり取り除いて、きれいになった家で冷たいビールを飲んで疲れを癒す。気持ちの良いひと時でした。
畳は、藁とイグサという自然素材で作られ、保温性、吸音性、調湿性に優れ、肌さわりもよく暖かを感じさせてくれる優れた素材です。手入れが悪いと埃やダニの巣になるという欠点があるものの、もともと畳は日本における生活文化の原点だともいえます。
今はくらしの西洋化が進み、イス式の暮らしが定着していますが、暮らし方としての畳、素材としての畳を見直したいものです。

 

   
[昔は近くにある自然素材で家はつくられた]  
1970年前後の高度成長期に、石油化学製品の開発が進み、新建材が大量生産されるようになって、自然素材にとって代わりました。しかし最近になってようやく、化学製品による健康への悪影響や自然素材の良さが見直されてきています。
最近では、あちこちで国産材を使う動きも出てきています。間伐材を使って、節があっても安くてぬくもりのある木の家を作るというようなこともそのひとつの例です。国内にせっかくある森林資源をもっと活用し国産材を使って、日本の気候・風土にあった素敵な住まいを作ることは、森林保護、自然保護にもつながります。
   
[日本風土に合った素材選びと住まい方を工夫する]  
昔から、「日本の家づくりは夏を旨とする」と言われてきました。高温多湿で過ごしにくい夏をいかに快適に暮らすことができるか、長年にわたりいろんな知恵と工夫がなされてきました。
開口を出来るだけ大きく取って風通しを良くする、そして夏だけは障子をはずして簾に替える。また、軒の出を深くして日差しをさえぎり、その先にはヨシズをかける。家の南側には落葉樹を植えて夏の日差しを遮断する。夕方になるとどこの家も外に出て打ち水をする。そして床机に腰掛け夕涼み・・・
最近「高気密」「高断熱」といわれますが、たしかに気密性を高め、断熱性を高めれば、冷房、暖房効果が上がり、快適な室内環境となり、エネルギーの節約になります。
一方、気密性を高めることは、室内空気の汚染を増加させるということも考えられます。ビニールクロスや合板製のフローリングなどの新建材を使った家では、ホルムアルデヒドなどの化学物質が新聞紙上をにぎわしている「シックハウス症候群」の原因ともなっています。また気密性が良すぎると、外部との温度差が激しく結露の問題も起こってきます。
例えば、ムクの板材や漆喰といった自然素材の内装材を使い、換気を良くすれば、これらの問題は改善されます。人工的な空調などに頼りすぎず、もっと昔からの知恵や工夫を生かしながら、環境に優しく快適な住まい作りを目指したいと思っています。